店主のひとりごと

 

  • 2023年01月26日(木)09時43分

オリジナル盤特有の用語2

前回一部の用語について説明したが、まだいくつかあったので説明しよう。

1 CJ
コーティング・ジャケットの略語。ジャケットには表面にフィルムを貼ったラミネート加工がされているものとそうでないものがあり、同じレコードでもラミネートされているものを指します。CJのほうが古い場合もあります。

2 GF
ゲートフォールド・カバー(ダブル・ジャケット)の略語。見開きジャケットのことで、GFがオリジナルでシングル・カバーは後で発売された場合もあります。

3 Emboss
ジャケットの文字や図柄を浮き彫りにしてあるもので、同じレコードでもEmbossになっているものとそうでないものがあります。

4 Textured Cvr, Textured Lbl
ジャケットやセンターラベルには表面がザラザラのものがあり、ザラザラとそうでないものではザラザラのほうがより古い場合があります。

5 Company Sleeve
ジャケットはそのレコード特有のデザインが一般的ですが、内袋はレーベルごとに同じデザイン、規格のものが多く、また時代ごとに変化していて、同時代に使われたメーカー製の内袋という場合にCompany Sleeveとしています。

6 Original Sleeve
レコードによっては、そのレコードのために製作された専用の内袋が付いている場合もあります。

7 Red Wax, Blue Wax, Green Wax
レコード盤の色は殆どが黒ですが、中には赤、青、緑などの色があり、有色か黒かでオリジナリティを判断する場合もあります。

※1及び2は「リストの見方」にも記載しています。
https://www.ninonyno.ne.jp/howto/

上左:Emboss
上右:Textured Lbl
下:Green Wax

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  • 2023年01月24日(火)15時29分

オリジナル盤特有の用語

記録的な寒波がやってきたので福岡でも雪が降っている。こんな日は家に閉じこもってじっと寒波の過ぎるのを待つことにした。それにしても今年の寒さはこれまで体験したことのないようなレベルのものだ。寒いのが苦手な私には少しつらい部分もある。
話は変わって、最近お客様から質問を頂いて気が付いたことがあるので、今回はオリジナル盤を最近聴き始めた、ないしはこれから聴くという方に、オリジナル盤特有な用語の説明を述べてみることにした。

1 Deep Groove
レコード盤のセンターラベル、外側から内側1cmくらいのところに外周に沿った溝があります。これのことで、深く掘ってあるのをDeep Grooveといいます。レーベルによりますが、1950年代のものは多くのレーベルがDeep Grooveになっていて、ないものと比較するとより古い、先に発売されたものとして判断します。オリジナリティの判断にはあまり使いませんが、使う場合もあります。
またこの溝も60年代になるとだんだん無くなっていきます。
なお、上記説明はアメリカ盤を中心に関するもので、イギリスや他の国では溝の位置がセンターラベルの外周から1~2mmのところにあるものやスピンドル近くにあるものも見受けられます。

2 Flat Disc
レコード盤の最外周部にはカートリッジが外側に落ちるのを防ぐための盛り上がりがありますが、1950年代中ごろまでは技術的な問題で最外周部に盛り上がなく平らになっているものがあります。
この平らになっているものをFlat Disc(ないしはFlat Edge)といいます。一般的にFlat Discのほうがより古いとされます。

3 額縁カバー
ジャケットの上部及び背表紙(左)側に段差のあるものがあります。これも製作上の技術的なもので、額縁カバーのあるものがより古いとされます。

4 Flip Back
アメリカ盤では殆ど見ませんがイギリス盤でよくあるパターンで、1960年代中盤くらいまでジャケットの裏側に折り返しがあります。これをFlip Backといい、通常のものより古いとさます。

5 Dead Wax
音溝とセンターラベルの間に溝のない部分があります。Dead Waxにはマトリックナンバー、マスタリングを行った人の名前ほか色んな情報が記載されている場合があります。

6 Van Gelder刻印、RVG刻印、手書きRVG
デッドワックスにある記載のことで、ルディ・ヴァン・ゲルダーがマスタリングを行ったことを表しています。古い順に「手書きRVG」→「RVG刻印」→「Van Gelder刻印」となります。

7 Promo Copy
レコードを発売するときに、流通用とは別にラジオ局などに配布するためのレコードが制作されました。この場合非売品としての扱いのため、センターラベルを別のスタイルにするないしはジャケットに非売品としての記載をするなど区別しています。通常のオリジナル盤より流通量が少なく、希少なものとされます。

思いつくことを述べてみましたが、ほかにも色々専門用語を使っていますので、分からないことがあったらお問合せください。


左上:Deep Groove
右上:Promo Copy
下:Flip Back

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  • 2022年09月01日(木)09時40分

例外的なレコード

前回の「45rpm.は音がいい?」で、録音時に近い制作のレコードのほうが後で発売されたものより音的に優れている、しかし例外もあると述べたので、その例外を少し紹介しておこう。

Count Basie and His Orchestra / Count Basie and His Orchestra (Decca DL-8049)
1954年のリリースでレコーディングは1937~39年である。
カウント・ベイシー楽団がプロデューサー、ジョン・ハモンドの勧めでカンサスシティからニューヨークに進出したのが1937年、そして以後1939年までをベイシー楽団の黄金時代と評されている。ベイシー楽団は進出してすぐに「ワン・オクロック・ジャンプ」が大ヒットし、ギターのフレディ・グリーンを加えたリズム・セクションは「オール・アメリカン・リズム・セクション」と称され、レスター・ヤング、ハーシャル・エヴァンスという二人のテナーサックス奏者やバック・クレイトン、ハリー・エディソンという二人のトランペット奏者ほかスタープレーヤーを要してアメリカ中で大人気のバンドとなり、楽団の持つスイング感はどのバンドも真似の出来ないような強烈なものでもあった。本アルバムはその37年から39年を捉えた珠玉の演奏集である。
スイング時代のレコーディングを1950年代にLPに収録したものは各レーベルがやっているが、本作はその中でも出色の音質、50年代のレコーディングでは?と思うほど鮮度が高い。

Don Shirley / Water Boy (Columbia CS-9196)
このアルバムに関しては以前にも当コラムで触れているので詳細は省くが、映画「グリーン・ブック」の主人公、ドン・シャーリーのリーダー作である。それに、1961年リリースのDon Shirley Trio (Cadence CLP-25046)がオリジナルであり、コロンビア盤は1966年のリリースだから厳密に言えばリマスターということになる。しかし、音質で言えば圧倒的にコロンビア盤のほうが上なのだ。
1曲目、タイトル曲(奴隷の歌)でベースとチェロのイントロからピアノが入ってくる部分でサワサワサワ~ッと音の空気が漂って只事ではないのだ。ピアノがテーマを奏でてアドリブになると、ドン・シャーリーが人種差別への思いを語って、桁外れの音質が聴くものに彼の悲痛な思いを伝えてくれる。アルバム全体が一つの組曲のようになっていて、自由への賛歌をひしひしと感じる事が出来るのである。
注:カデンスとコロンビアでは収録曲が1曲だけ違う。

Duke Ellington / Unknown Session (Columbia JC-35342)
1960年の録音、そのままオクラになっていたテープが1979年に発見され陽の目を見たアルバムである。従って本来のオリジナル・レコードは存在しない。ジョニー・ホッジス、ローレンス・ブラウン、レイ・ナンスほかデューク・エリントン楽団のスタープレーヤー達によるコンボ演奏である。演奏も素晴らしいのだが、音は最高峰!臨場感、音離れほか色んな要素を持っている。特に、サム・ウッドヤードのライド・シンバルが22インチサイズということも分かるし、レイ・ナンスのトランペットの朝顔は丸くて、ハリー・カーニーのバリトンサックスは縦長で・・・目の前にエリントン楽団のスタープレーヤーたちが現れて演奏している。まるで手を出したらミュージシャンに触れることが出来るような。
20年前の録音をトップクラスのサウンドで聴けるということは、リスナーにとって至福の時である。

上左:Count Basie and His Orchestra / Count Basie and His Orchestra
上右:Don Shirley / Water Boy (Columbia CS-9196)
下:Duke Ellington / Unknown Session

アップロードファイル 175-1.jpgアップロードファイル 175-2.jpgアップロードファイル 175-3.jpg

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  • 2022年08月31日(水)09時35分

45回転は音がいい?

ここ数ヶ月、EPやシングルの入荷が多く、お客様にはかなりのものをお買い上げ頂いていて、メールなどで感想を聞かせてもらえるのである。
「最近、7インチ盤を何枚か聴いているのですが、33回転と45回転では音質的に45回転のほうが有利なのでしょうか?」との質問があった。
確かに、45回転盤は33回転盤よりも音溝をトレースする時間が長い、音溝が大きいなどの理由で音的に有利という説があるのは何度か目にしている。

ある程度同じ音源の7インチ盤及びLPを聴く事が出来て得た結論は?
その前に、同じ曲がシングル、EPそしてLPには収録されている場合にはいくつかのパターンが有ることから説明しよう。
1. シングルを発売したら大ヒットしたのでLPにも収録した。
2. LPに収録されていた曲の評判が良かったのでシングル・カットして発売した。
3. シングルしか発売されたことがない曲を集めてLPを作った。
以上のパターンの場合、聴き比べてみるとそれぞれに音の違いがあり、45回転だからこちらのほうが優位とは言えなかった。

1990年ころに発売された米誌「アブソリュート・サウンド」に、「録音された日に制作されたレコードが音的には最も優れている、日にちが経過するほど音は劣化する」との記載があったのを思い出した。ほとんどのケースがこれに当てはまり、1の場合はシングルが優位、2はLPが優位、3はシングルが優位だった。但し、例外もあるがこれについては別の機会に。
フォーマットより時間の経過のほうが音質に与える影響は大きいようである。

別の角度からの質問もあったので紹介しておこう。
「私は最近ある程度の音であれば、演奏内容が良ければ空気感も共存するような気がしますがどうでしょうか。空気感は録音状況に依存するのでしょうか?」
空気感は録音した場所や使っていた機材、またエンジニアの技術による要素のウエイトが高いと思う。50年代初期のコロンビアではニューヨークのフリー・メイソン寺院をスタジオとして使っていて、その後買い取ったとのこと。そんな音響の優れた場所で録音した場合により空気感を感じるのである。
例えば” Vic Dickenson / Vic Dickenson Septet, Vol. 1 (Vanguard VRS-8001)”は、ジョン・ハモンドがコロンビアからその寺院やスタジオを提供してもらってレコーディングしたとあり、また、”Lee Wiley/ Night In Manhattan (Columbia CL-6169)”も、あくまでも想像だが、同じ場所ではないだろうかと思えるのである。
他のレーベルでも、例えばルディ・ヴァンゲルダーのヴァンゲルダー・スタジオなど、各レーベルそれぞれ優れた場所を使用していたとは容易に想像できる。

鮮度と空気感は少し異なるもので、中には空気感は乏しいが鮮度は高いもあるのだ。私の音質評価は空気感をより重要視しているのである。


左:Vic Dickenson / Vic Dickenson Septet, Vol. 1
右:Lee Wiley/ Night In Manhattan

アップロードファイル 174-1.jpgアップロードファイル 174-2.jpg

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  • 2022年06月23日(木)09時34分

一枚一枚のレコードに

レコード店を始めて22年になる。これまで聴いたレコードは何枚くらいになるのかな?あんまり数えていないけど、普通に聴いている方たちに比べたら少しは多いと思う。
聴きはじめはジャズのインストが殆ど、他のジャンルにはあまり興味はなかった。しかし、入荷するものにはヴォーカル、ロック、クラシックと色んなジャンルが有るのだ。
そこで、音的にどうだというふうに思うようになった。しかし、ジャンルが違うとこれまで聴いてきたジャズとは音の鳴り方が違うのだ。ポピュラー系の音にはついていけるけど、クラシックはサッパリ、弦楽器のハーモニーが分からない。どの音がいい音か、どの音はイマイチなのかはっきりしない。
元々自分の聴き方は音の姿形を見る聴き方なのだ。何時そうなったのかははっきりしないが、姿形が見えるレコードはいい音だなと思うようになっていた。ポピュラーソングは分かりやすいけど、クラシックは難しいのよね。

聴く角度としては、以前はステレオを中心に聴いていたが、モノラル・カートリッジでモノラル盤を再生する、ということをやりだした後、聴き方が変わったのである。1950年代始めから中盤のモノラル盤には桁違いの音質がある。何故なのかを考えているうちに色んなことが分かってきたのだ。
・シンプルな録音である
・SN比が高い
・リバーブを使っていない
・オーバーダブをやっていない
・イコライザーによる帯域バランスの調整をやっていない、ないしはやったとしてもほんの少々
・一発録音
などが考えら、結果として
・音離れがいい
・空気感抜群のものが多い
・立体音場も十分現れる(ステレオとは違いがあるものの)
・帯域バランスが自然のものにより近い
・人の声が人の声として出てくる
・ミュージシャンの表現、感情がより伝わってくる。

そんなことを踏まえながら聴いていくといつの間にかクラシックの音質も苦手ではなくなってきたのである。
ただ、私はモノラルの音質がステレオより勝っているとは思っていない。上記を踏まえながら聴いても、ステレオにもTAS Super Disc、長岡鉄男のA級外盤セレクションほか優れた音質のレコードはたくさんあるのだ。
例えば、”Enya / Watermark”は多重録音をかなり重ねながら作成されているものの、それが音質向上に役立っているし、”Simon & Garfunkel / Parsley, Sage, Rosemary & Thyme”はリバーブや多重録音を見事に使いこなしている。
結局、ステレオ、モノラルは違うものとして捉えたほうがベターだと思っている。


Enya / Watermark

アップロードファイル 173-1.jpg

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