店主のひとりごと

 

  • 2019年12月12日(木)11時10分

お客様からの質問

リストの表記で簡略したものや言葉の意味が不明といった問い合わせがありますので、いくつか説明しておきます。

>>deep groove
深溝のことです。レーベルによって違いはありますが、40年代から60年代の中頃までのレコードにはセンターラベルの内側1cmくらいのとこに溝が有るものと無いものがあり、一般的に同じレコードであれば溝の有る方の制作年代がより古いものとなります。レーベルと時代によっては溝の有るものがオリジで無いものをオリジとしない場合もあります。但し、例外もありまして、Libertyは無いものが古いといった場合もあります。

>>company sleeve
後で取り替えたものではなく、メーカー制作の内袋が付いていること。

>>London Blue Back
Deccaというレーベルは米Deccaと英Deccaがあり、この2社は1940年頃までは同じ会社でしたが以後分裂して資本形態が別の会社になりました。米Deccaをイギリスで販売する場合はBrunswickというレーベル名、英Deccaをアメリカで販売する場合はLondonというレーベル名を使用しました。ステレオ盤の初期に英Decca制作のLondon盤は裏面が薄いブルーになっていて音がいいとされています。これをLondon Blue Backと称します。

>>wobc
write on back cover、つまりジャケットの裏面に落書きがあるという意味です。

>>white sleeve
発売時から付いていると思われる、後で取り替えたものではない白地の内袋のこと。

>>flat disc
国によって異なりますが、1950年代中頃以降レコードの最外周部に針が横滑りしないように盛り上がっているグルーブガードが付くようになりました。それ以前のものには付いていないので同じレコードでも付いているものより付いていない(flat disc)のほうがより古いとされます。

>>flip back
イギリス盤に注目すると1960年代中頃までジャケットの裏面に折り込みの付いているものとそうでないものがあります。付いているものをflip backといっています。これもflip backがより古いものとされます。

Libertyの最初期は溝なし

アップロードファイル 152-1.jpg

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  • 2019年05月15日(水)11時18分

ドリス・デイさんご逝去

昨日、ひきこ杜さんから電話
「ドリス・デイが亡くなったそうです」
「知らなかった。有難うございます。」
早速ネットで調べてみると「5月13日、97歳で逝去」とあった。

ドリス・デイはハリウッドスター&歌手で、どちらでも成功した数少ない芸能人だった。1960年代に映画で見た記憶はあるが、あまり印象には残っていないのは残念でならない。
はっきり彼女を意識しだしたのはレコード店を始めて間もないころ、寺嶋靖国さんのラジオ番組にゲスト出演したときの寺嶋さんとの会話からであった。内容は「過去の今週の一枚」の"Latin For Lovers" Columbia CS 9110に書いているので興味のある方はご覧頂きたい。
それまでフェロモンを感じるヴォーカルといえばジュリー・ロンドン、アビー・レーンなど強烈なフェロモンを撒き散らすタイプで、私にはほのかなフェロモンを感じる(聴く)力がなかったのだろう。ラジオ番組の後ドリス・デイを聴き直してみると「ん、これは」と思い、それから興味を持って聴くようになったのである。
ドリス・デイはColumbiaにかなり多くのアルバムをレコーディングしているので聴いていくと、表現力が豊かで1枚のアルバムの中でも曲ごとに違う表現をし、歌の持つ意味や彼女が伝えたいことがストレートに伝わってくるというところが歌手としてのレベルの高さである。例え有名歌手でもどの曲を聴いても同じという歌手はたくさんいるのだ。

これまでドリス・デイのアルバムについてはかなりの枚数聴いているので、特に印象深いアルバムと、そのアルバムでベストと思われる曲を紹介してみよう。

Day By Night Columbia CL 1053
「アラバマに星落ちて」
「昨日の貴方は素敵だった・・・」その気持が伝わってきてゾクゾクしてしまう。「夜用のレコードだけど夜聞くと危険」はこの曲を聴いているときに浮かんだセリフである。

Day in Hollywood  Columbia CL 749 
「二人でお茶を」
少し前に北九州からK藤さんが見えた。K藤さんは勝浦のときからのお客様で、ご来店いただくときはいつも奥様ご同伴である。K藤さんが聴かれるのはヴォーカルが多く、そのときもヴォーカル・メインで聴いて頂いていたときドリス・デイの話になったところ奥様が「ドリス・デイの「二人でお茶を」聴きたい」とおっしゃる。「在庫あったっけ?」とか思いながら探していたら、ありました。"Day in Hollywood"の1曲目に入っているのだ。ドリスがサラッと歌っている。このサラッとがいいのだ、忘れた頃に聴きたくなる魅力がある。

Day by Day Columbia CL 942
「枯葉」では、ベヴァリー・ケニーの「グリーン・スリーブス」みたいな「ルー・ルー・ルー」をやっていて、これがまた男心をくすぐるのよね~。ベヴァリー・ケニーとはちょっと雰囲気が違って、色っぽいというよりまだ子供っぽい「「ルー・ルー・ルー」なのだ。いや~、これはたまらん。

What Every Girl Should Know Columbia CS 8234
「ムード・インディゴ」は少年と少女の恋のお話しですが、ドリス・デイが歌うとちょっと明るめの大人の恋に変わります。オーケストラバックのヴォーカルもののステレオ録音では、モノラルみたいにヴォーカル中心にスポットライト当てるだけではだめでオーケストラとの融合が難しいところですが、このドリス・デイはモノラルなみのヴォーカルの質感とスピーカーの存在を感じさせないオーケストラの融合が見事です。これを聴いたらほかのレコードが聴けなくなるレベル、特に夜聴いたら〇〇が××に。

I Have Dreamed Columbia CL 1660
数あるドリス・デイのアルバムで私の最も好きな一枚。「夢見る頃を過ぎても」はナット・キング・コールの名唱で知られ、たくさんの歌手が歌っているけど、女性ではドリスが一番。「夢をみるには歳とりすぎた、恋をするにも・・・でも貴女のキスが欲しい」・・・いや~、聴いていると涙が出てきて。ドリス・デイが貴方に夢を語りかけてくれます。

Latin For Lovers Columbia CS 9110
「パーハップス・パーハップス・パーハップス(キサス・キサス・キサス)」では、元々ラテン語の曲を英語で歌っていて、「キサス・キサス・キサス」という部分を「パーハップス・パーハップス・パーハップス」と言っているのだけど、これがもうたまらんフェロモンなのだ。「パーハップス」は何度も出てきて、終盤になるほど熱を帯びてくる。特に最後に低い声で「パーハップス・パーハップス・パーハップス」ときたら聴いているほうは「あ~、もうダメ~」となってしまった。(言っとくけどオナニーはしなかったよ)

Sentimental Journey Columbia CS 9160 
「お久しぶりね」
このアルバムはタイトル曲もいいけど、やっぱり「お久しぶりね」を押したい。いつの事だったか、夕方熊本市の下通りを歩いていたら昔友達だった人妻にパッタリ会って、その後二人でスナックに行って・・・話の続きはアナログ誌8号に書いたので省略するけど、その思い出がまざまざと蘇るのである。

合掌。

Day By Night Columbia CL 1053
What Every Girl Should Know Columbia CS 8234
I Have Dreamed Columbia CL 1660

アップロードファイル 151-1.jpgアップロードファイル 151-2.jpgアップロードファイル 151-3.jpg

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  • 2019年03月04日(月)14時14分

グリーンブックとドン・シャーリー

昨日、ひきこ杜さんから電話。
ひきこ杜さん:「新納さん、「グリーンブック」という映画がアカデミー賞を取りましたが、知っていますか?」
Duke:「知りません」
ひきこ杜さん:「ドン・シャーリーの実話を映画化した作品です」
Duke:「え~、全然知らなかった」
ひきこ杜さん:「今、福津TOHOで上映中なので今日観に行きます」
Duke:「私も時間が取れたら観ます」
嬉しい話が飛び込んできた。

ドン・シャーリーはジャズ・ピアニスト(クラシックの要素もあるので断定はできない)ではあるが、意外とジャズ系の書籍で紹介されることは殆どない。私が彼を知ったのは17~8年ほど前TAS Super Discに「ウォーター・ボウイ(Columbia CS-9196)」が掲載されていたので興味を持っていて手に入れてみたら音質はもちろん、演奏が凄い感動的なのである。で、「これはお客様に聴いてもらいたい」と思いご来店いただいた方に聴いてもらっていたのだ。
ある日「レコードを聴いたことがないので聴かせて下さい」と言って若いお嬢さんとアッシー君みたいな男の子が一緒にやってきたので、何枚か聴いてもらって「ウォーター・ボーイ」をかけたらそのお嬢さんが突然ボロボロ~ッと涙を流しているのだ。レコードを聴いて感動するということは分かっているつもりだけどここまで感動するとは、多分何か心に秘めたものがあったのだろう。
それからもこのレコードにはいくつものエピソードがあって当店の看板レコードになり、別のエピソードをアナログ誌8号(2006年発売)にも掲載したこともある。

では、レコードの解説を少し
Don Shirley / Water Boy (Columbia CS-9196)
(Track Title)
A1 Water Boy
A2 Where's My Bess - from "Porgy and Bess"
A3 In A Moorish Marketplace
A4 The Man I Love
A5 This Nearly Was Mine - from "South Pacific"
B1 Blue Skies
(Tribute To Billy Holiday) - Cadence CLP-25045のみ収録
B2 Adieu Madraz
B3 By Myself
B4 Freedom
B5 When Your Lover Has Gone
(Personnel>)
Bass - Ken Fricker
Cello - Juri Taht
Piano - Don Shirley

編成はピアノ、チェロそしてベースのトリオで一般的なピアノトリオとは少し違いドラムは入っていない。冒頭のタイトル曲「ウォーター・ボウイ」は綿畑で働く黒人の労働歌であり、続く「ウェアズ・マイ・ベス」はミュージカル「ポーギートベス」より、また「ディス・ニアリー・ワズ・マイン」もミュージカル「南太平洋」の挿入歌で他にも「ザ・マン・アイ・ラブ」などスタンダードナンバーも含まれている。A面1曲目から通して聴くと私にはアルバム全体が組曲になっているように思えるのである。奴隷の歌から始まって恋の歌などを挟んでB面4曲目の「フリーダム」では以前は奴隷だった主人公が自由を得て羽ばたく様子が描かれているのである。
そしてドン・シャーリーの見事な演奏とコロンビア技術陣のマスタリングによって多分レコード史上最高レベルのうちの1枚とも言える音質が生まれたのではないだろうか。オーディオの究極は「レコードを聴いた後に何かが伝わってきて感動する」ということにつきると考えているが、この「ウォーター・ボウイ」ほど、感情、思想ほかいろんなものが伝わってくるレコードは他にはあまり知らない。

ドン・シャーリーの話が映画化されるとは、早く観なくちゃ。

お詫びと訂正
Don Shirley / Water Boy (Columbia CS-9196)、 1966年発売をこれまでオリジナルとしていたが、厳密にはリマスターなので説明しておく。
最近のことだが、「ドン・シャーリー/ドン・シャーリー・トリオ(Cadence CLP-25046)」1960年発売というアルバムが入荷したことがあり、曲目が殆んど一緒でコロンビア盤には入っていない”Tribute To Billie Holiday”が含まれている。演奏内容を聴いてみるとコロンビアもカデンスも同じで、つまりオリジナルはCLP-25046(モノラルはCLP 3046)であり、TAS Super Discに選定されている「ウォーター・ボウイ(CS-9196)」はコロンビアによって制作されたリマスター盤なのである。お詫びして訂正します。

上2枚:Don Shirley/Water Boy (Columbia CS-9196)
下:Don Shirley / Don Shirley Trio (Cadence CLP-25046/CLP-3046)

アップロードファイル 150-1.jpgアップロードファイル 150-2.jpgアップロードファイル 150-3.jpg

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  • 2019年01月31日(木)13時13分

Ella & Louis - Kさんからのメール

新納さん おはようございます。
一昨日Ella & Louisが届き、鑑賞しています。予想以上の素晴らしさです。
CD、SACD、復刻LPなど、諸々のメディアで長い間繰り返し聴いてきました。どこかセピア色の過去を感じたものでした。
自分は今現代のここにいて、EllaやLouisの素晴らしい演奏の記録を聴いている感じと表現すればよいのでしょうか。
ところが今回のオリジナル盤を再生すると、EllaやLouis、バックの面々が自分の6ー7m先に来てくれてそこで演奏してくれているようです。彼らと自分に時間の差を感じません。
もしかしたら、シンバルのハイハットの鋭い音や、ベースのブンブンとした迫力など、「音」1箇所の先鋭度を聴くようなオーディオマニアにとってはElla & Louis オリジナル盤は物足りないのかもしれません。
しかし、音楽を愛する人であれば声や楽器の発する音の産毛や音を発していない周囲に音が広がる雰囲気がそのままにパッケージされていることに気付くはずです。
再発、リマスター、再生装置のクオリティ不足など、ちょっとのことですぐに失われてしまう微細な情報ですが「今そこに来てくれている、自分も一緒にいる」というTime Machineとなるには必須の情報です。
1956年8月16日に演奏・録音されたこの素晴らしい演奏の場所に直接私が行くことは不可能ですが、不可能でないかのように感じる事ができました。全ての曲が私にとってお気に入りです。
盤質、ジャケットの状態も約65年前のものと考えれば非常に状態が良くGarrad 301にOFD 25を装着しモノラル再生している私の環境では、ほとんどノイズを感じません。
古いLP1枚に○万円という値段は、興味のない人にとってはオカシイんじゃない?となるのかもしれません。
でも、私にとってはプライスレスな買い物でした、寧ろ安い。
絵画や器の世界の超一流品を手元に置く財力は自分にはありません。しかし、LPは幸いに工業製品として大量に作られたので、その芸術的価値に比べとてもとても安い。
自分より遥かに優れた、しかも今は会うことができない人格に直接触れることができる。
レコードやオーディオは本当に素晴らしいモノだと思います。
本当にありがとうございました。
今後もよろしくお願いいたします。

By K

アップロードファイル 149-1.jpgアップロードファイル 149-2.jpg

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  • 2019年01月20日(日)10時18分

音圧が低い

昨年8月頃、どうもスピーカーの音圧が低いと感じるようになった。ヴォリュームの位置をいつもと同じ(ステレオは11時、モノラルは12時30分)にしていても音が飛んでこない、というより音が小さいのだ。あれこれ考えてみても原因が分からない。その症状は9月になっても同じで、本当だったら9~10月の天気のいい日にはバリバリ鳴り出すんだけど今年は違うようだ。結局、熊本の佐藤俊哉さんに原因を調べてもらうことにした。

佐藤さんシステムを眺めていて、「スピーカーが曇っていますね、掃除していないでしょう?」とおっしゃる。
「はい、半年ほど掃除していません」。
「マーチン・ローガンは振動板がフィルムになっているから通常は後ろが透き通って見えるんですが、今は後ろがぼやけています。埃のせいでしょう」
忙しさにかまけてスピーカーどころかオーディオ周りの掃除を約半年ほどやっていなかったのだ。そのことが原因でマーチン・ローガンの網目の部分に埃が溜まり振動板が曇った・・・結果振動が弱くなっているのではとの診断が出た。

佐藤さんは早速振動板の掃除に取り掛かった。掃除機のヘッドを外してパイプ部分にトレーシーを巻きつけ、マーチン・ローガンの振動板に付いている網目の部分に接触しない程度の距離でパイプを動かしていくといった作業である。結構時間はかかったが、やる前と後ではマーチン・ローガンの透明度が違って後ろが透き通って見えるようになった。

佐藤さんは「ついでに接点クリーニングもやっておきましょう」と、プレーヤーからフォノイコ、プリアンプ、パワーアンプそしてスピーカー&ケーブルと接続部分全ての接点クリーニングをやってくれた。このとき使ったのはクレの接点復活スプレーとベビー綿棒である。
結果、作業前と作業後では全く違う音、音圧もグンと上がって全体的にクリアになり申し分ない音になったのである。
オーディオには掃除も重要ということを改めて認識させられた。

Chris Connor Sings the George Gershwin Almanac of Song

アップロードファイル 148-1.jpg

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