レコードのススメ

第1章:レコード講座
 第9節 今週の一枚100選 E)ジャズ名盤

新着レコードの中から今週の一枚として選んだレコードは2007年7月現在で203枚になります。これまで販売済みのものは即リストから外していましたので、お客様からは「そのまま掲載しておいて欲しい」との要望もありました。そこで、過去に選んだものから100枚をリストアップし、また推薦文に若干の加筆修正したものを10回ほどに分けて掲載します。第5回はジャズ名盤です。

Johnny Griffin/The Kelly Dancers (Riverside RLP 420)
日本のジャズファンやオーディオファンにはワンホーン・カルテットの人気が高くそれもサックス系だ。世界の民謡をジャズの素材として取り入れたこのケリー・ダンサーズは、ジョニー・グリフィンの魅力を遺憾なく発揮したワンホーン・カルテット・アルバムである。セロニアス・モンク・グループでも活躍したグリフィンは、Riversideに15枚ものアルバム作を残しているが、中でもこのケリー・ダンサーズは群を抜いている。テナーサックスのズズズが聞こえて、バリー・ハリスのピアノが実に品良くバッキングを努めて、結果としてグリフィンを代表するアルバムとなった。サックスがズバッとくる音をお求めの方、オーディオで出そうとしてもソフトがイマイチだったら無理ですが、このオリジナル盤ケリー・ダンサーズだったら大丈夫です。



Benny Goodman/Carnegie Hall Jazz Concert Vol.2 (Columbia ML 5439)
1940年代も終わりのある日、自宅でくつろいでいたベニー・グッドマンに、古ぼけたディスクを持ったベニーのお嬢さんが言いました。「お父さんこれな~に?」それは、1938年のあの伝説の「カーネギー・ホール・コンサート」を録音したVディスクではありませんか。録音が残っていることさえも知らなかったベニーは、すぐにかけずにそのままコロンビア・レコードに持ち込みました。そこで初めて陽の目を見た「カーネギー・ホール・コンサート」は、当時の最新技術を駆使してLP化され、発売されました。発売当初から記録的な大ヒットとなり、以後50年を経た現在に至るまで繰り返し繰り返し発売されています。この推薦盤は、Green Lbl、Flat Disc「これほどの状態でよく保存されていてくれた」と言えるような素晴らしい状態です。ベニーが、ハリー・ジェイムスが、ライオネル・ハンプトンが、ジーン・クルーパがそこにいます。憧れの歌姫、マーサ・ティルトンのヴォーカルが凄く可愛いい!



Charlie Rouse/Yeah! (Epic BA 17012)
先日初めていらしたお客さんが「何か聴かせてください。テナーサックスがいいです。」とおっしゃるので、たまたま手元にあったこのアルバムをかけてみた。ペック・モリソンのベースが力強くイントロを奏でチャーリー・ラウズがズズズと登場するとお客さん「かっこいい~!」としきりに感心しながら「テナーサックののサブトーンが聞こえるオーディオは初めて聴きました。」と。その方はテナーサックスを吹く方で、音には結構うるさいか方だった。セロニアス・モンク・カルテットで活躍したチャーリー・ラウズのリーダー作はブルーノート、ジャズランドそしてエピックに数枚あるものの、どれも入手が難しく、特にこの"Yeah!"は高音質として知られ、海外でもかなり高値がついているが、このClassic Recordsが製作したリマスター盤は、音質レベルが高く音的にも楽しめる一枚である。サックスがズバッと出てくるような音をお望みの方にお勧めです。



Eric Dolphy /At The Five Spot Vol.1 (New Jazz NJ 8260)
エリック・ドルフィーは短い活躍期間の中、私達ジャズファンに素晴らしいプレゼントを残してくれました。このアルバムはドルフィーが残した遺産のなかでもナンバー・ワンと評されるものです。1961年2月16日のファイブ・スポットにはもう一人、あまりにも若くこの世を去った天才ブッカー・リトルがいました。二人の魂の交歓を聴けるのは他に数枚しか存在しないのです。悲しくも美しい二人のプレイは私の心の中に深々としみ込んできます。ジャズ史に偉大な足跡を残した二人が最も輝いていた夜をご堪能ください。



Erroll Garner/Concert by the Sea (Columbia CL 883)
「無人島に1枚のレコードを持っていけるとしたらこのレコード!」ジャズファンにはお馴染みのセリフだが、無人島のレコードは昔からこれと相場が決まっていた。サンフランシスコでのライブ録音のこのアルバムでは、聴衆と一体となったエロール・ガーナーのリラックスした演奏が聴く者の気持ちもやわらげてくれる。ガーナー独自のスタイル、ビハインド・ザ・ビートに乗って曲目もよく知っている曲ばかり。国内盤で聴いたときは、ベースもドラムもほとんど聞こえなかったがオリジナル盤ではそれがしっかり入ってています。



Lionel Hampton/Just Jazz (Decca DL 7013)
ジーン・ノーマンのプロデュースによるジャスト・ジャズ・コンサートは1947年パサデナ・シヴィック・オーデトリアムで行われた。そのハイライトはライオネル・ハンプトン率いるオールスターズによるスターダスト。アルトサックスの名手ウィリー・スミスによるテーマから、聴衆はその演奏の素晴らしさに引きずり込まれていった。スミスに続くチャーリー・シェイバースのトランペット、コーキー・コークランのテナーサックス、スラム・スチュアートのボウイング・ベース、トミー・トッドのピアノそしてバーニー・ケッセルのギターが盛り上げるだけ盛り上げたところに御大ハンプトンが登場すると、会場は一瞬静まったかのように思えた。しかし、演奏が終わったときそこはもう興奮のるつぼ。この10インチ盤は歴史に残る一大イヴェントの忠実な記録である。



Modern Jazz Quartet/Concorde (Prestige PRLP 7005)
音楽は、録音によってもしくはソフトによって全く違うものとなる場合がある。MJQはどちらかというと室内楽的な要素が強くジャズ的なフィーリングには乏しいという受け取り方が一般的。例えばフォンテッサ、ピラミッドなど50年代のヒット作でもそういった要素は否定できないが、このコンコルドをNYCラベルで聴くとあながちそうとも言えないことがよく分かる。ヴァン・ゲルダー渾身の録音でもあるこのアルバムでは、パーシー・ヒースのベースはパワフル、ミルト・ジャクソンのヴァイブもMJQ以外での演奏のように熱いフィーリングに満ちている。国内盤と比較するとよく分かることではあるが、プレスティッジNYCラベルの音は桁が違う。



Oliver Nelson/The Blues and the Abstruct Truth I(mpulse A 5)
邦題「ブルースの真実」はオリバー・ネルソンの生涯の最高傑作であり、60年代初頭ジャズが爛熟期を迎えた時を代表する歴史的な名盤として知られている。ネルソンの絶妙なアレンジによる重厚なハーモニーはオーケストラ演奏を思わせ、エリック・ドルフィー、フレディ・ハバード等のソロは見事な出来映えで、このアルバムの名盤としての地位を揺るぎないものにしている。またAM-PAR時代のインパルスには高音質な録音が多く、当然この「ブルース・・・」もミュージシャンの熱気を伝える名録音、ロイ・ヘインズやポール・チェンバースがガツン、ドスンと来ます。



Thelonious Monk/Plays the Music of Duke Ellington (Riverside PRLP 12-201)
1955年、バド・パウエルの麻薬事件によってキャバレー・カードを取り上げられ、またボブ・ワインストック(Presige)からの借金に縛られて不遇の生活を送っていたセロニアス・モンクに転機が訪れた。Riversideのビル・グロウワーが借金を払いモンクと契約したのである。このアルバムはモンクのRiverside移籍第1作であり、同社の12インチLP第1弾でもある。敬愛するデューク・エリントンの作品を演奏したこのアルバムからは、自由を手にしたモンクの喜びの表情も聴くことが出来る。また、発売後すぐジャケットが変更されたため、1stジャケットを見ることも希であり、Riverside White Lblもなかなか手にすることが出来ない。音も演奏も、それまで聴いていた国内盤や後のプレスとは格段の違いがあり、改めてモンクの真価を垣間見れることは嬉しい。ジャケもボロだし傷パチもあるが、その凄さは別格!