レコードのススメ

第1章:レコード講座
  第9節 今週の一枚100選 B)白人、金髪&別嬪さん No.1

新着レコードの中から今週の一枚として選んだレコードは2006年12月現在で183枚になります。これまで販売済みのものは即リストから外していましたので、お客様からは「そのまま掲載しておいて欲しい」との要望もありました。そこで、過去に選んだものから100枚をリストアップし、また推薦文に若干の加筆修正したものを10回ほどに分けて掲載します。第二回はヴォーカルです。

Jo Stafford / Jo + Jazz (Columbia CS 8361)
スタッフォードの代表作といえばこのJo+Jazz。ジョーのアルバムにはどちらかといえばポピュラーソング的な歌い方のほうが多いが、これは本格的なジャズ・アルバムである。サイドメンにエリントン楽団の錚々たるメンバーを配したこのアルバムは、彼女の歌とホッジスやウェブスターのソロが絶妙に絡まって、素晴らしい出来映えになっている。今回はたまたまステレオとモノラル、どちらもオリジナルが揃っているので比較して聴くのも面白い(Columbiaの場合ステレオのほうが音が良いものが多い)。別嬪さんヴォーカルとエリントニアンズはベストマッチ!




Ann-Margret / The Vivacious One (RCA LSP-2551)
アン・マーグレットは女優さんでスクリーンでは大活躍していたが、歌のほうもなかなか上手くてRCAに5枚のアルバムを残している。声はキュート、しかし歌い方はイメージ通りのパンチの効いた歌を聴かせてくれる。彼女の魅力が十分に聴けるこのアルバムは、音質も申し分なく、ヴォーカルが真ん中前方に飛び出して来て、あどけないフェィスと迫力のボディが歌って踊ってくれる。小ぶりの唇がたまりません!




Ann Richards / Ann, Man! (Atoco 33-136)
ヴォーカルの四大要素は「白人、金髪、別嬪さん&人妻」。アン・リチャーズはそのなかの金髪を除いた三つもクリアしているのである。スタン・ケントンの奥さんで61年に離婚したが、このアルバムはその離婚と同時期に録音されている。苦悩に満ちた人妻のヴォーカルは如何なるものか?と期待してみたると、これがなかなかいいほうに期待はずれ、明るくけなげソフトなフェロモンを感じさせてくれる。特に「イエッサー・ザッツ・マイ・ベイビー」でレッド・カレンダーのベース・イントロに乗って登場する彼女には男を虜にしてしまうような可愛い魅力があるのだ。バーニー・ケッセルを中心としたコンボのサポートも秀逸。ジャック・シェルドンのトランペットがヴォーカルに絡みつくようで、ジャズ・ヴォーカルの華やかな味わいを満喫出来る一枚でもある。50~60年代前半のアトランティック系列の録音には、いいもの、あまり大したことないものあるが、これはいけます。なお、ジャケット写真はプレイボー誌の提供です。




Abbe Lane / The Lady In Red (RCA LSP 1688)
数多い白人・金髪・別嬪さん歌手の中でも、ひときわ妖艶に光り輝くアビー・レーン。ザビア・クガートの奥さんで、6カ国語を自在に操り、ブロードウェイ・スターとしても活躍しました。その、アビー・レーンの妖艶さが最も色濃く出ているのが、この”レディ・イン・レッド”です。ピンクのランジェリー、プードルに赤い薔薇。ジャケもビューティフルなら、曲も「私を狂ったように愛しくれるなんて、どうしていいか分からない」ほか、ドキッとするようなタイトルばかりです。このアルバムを聴くときは、アビー様に失礼ですからお風呂に入って下着を整えてください。




Barbara Lea / A Woman in Love (Riverside RLP 2158, 10")
10インチ盤は音がいいとの定評があるが、今回は、その10インチ盤を紹介しよう。リバーサイドのビル・グロウワアとオリン・キープニュースによって制作された、バーバラ・リーの「ウーマン・イン・ラブ」は、ヴォーカル・ファンのみならずジャズ・ファンにもコレクターズ・アイテムとして愛されるアルバムの一枚である。バーバラの処女作であるこのアルバムは、恋する女性のはかなさを切々と歌いあげるバーバラの歌と共に、希にみる高音質であるということが、最大の魅力になっている。時代の経過により、ジャケは必ずしも美品とはいえないが、聴ける貴方は幸せ者だろう。バーバラがステージに佇んで歌ってくれます。(録音はヴァン・ゲルダー・スタジオ)




Joanie Sommers / The Voice of the Sixties (Warner Bros. W 1412)
LPにはこの1曲を聴けばOK!という曲が入っていることは多いが、このアルバムの「チェロキー」もそんな曲だ。クリフォード・ブラウンほかたくさんのジャズ・ミュージシャンが演奏して、曲名を聴いただけでメロディが浮かんでくる方は多いはず。ニール・ヘフティの編曲で超スローテンポ、殆どコンボとだけのバックに乗って歌うジョニー・ソマーズによる恋する女の表現は見事というほかない。ジョニー・ソマーズは可愛さが売りのポップ系の歌手でジャズっぽい曲にはあまり合わないと思う方も多いかもしれないが、この「チェロキー」は別格の出来ばえだ。




Peggy Lee / Black Coffee (Brunswick LA 8629, UK 10")
ペギー・リーの大ヒット作「ブラック・コーヒー」は米国デッカ、10インチ盤を聴いているが、それなりのいい音である。ところが、この英国ブランズウィック、10インチ盤ははるかに音のレベルが高く、ペギー・リーの表現というかフェロモンがまともに伝わってきて、聴いているほうがたじろいでしまうようなエネルギーを持っている。これを聴いた方が「ペギー・リーが膝の上に乗った」と仰ったこともあった。私の場合、夜中に聴いたときに○○が△△になったことはあったが・・・。ちなみに、イントロ部でニューヨークの静寂に出てくるトランペットはクーティー・チェスターフィールド(コンテ・カンドリの変名)。