レコードのススメ

第1章:レコード講座
 第4節 なぜオリジナル?


いろんな方とソフトについて話をする機会があるが、CDオンリーの方、国内盤の帯付きを専門に集めている方、オリジナル盤専門の方、高音質盤が大好きの方など、それは様々いらっしゃる。私はどのマニアなのかというと「もともとこてこてのジャズ・ファンでジャズ・オンリーだったが、最近改心してジャンルは問わなくなった。」だから「演奏内容がいい高音質盤派」になるだろう。
CDの音質をあまり評価していないからCDはこの際除外し、アナログに関しての話をしてみよう。

オリジナル盤専門や、オリジナル盤の良さに目覚めたコレクターは、たいてい「音がいいからオリジナル盤」とおっしゃる。なかには希少価値を求めてオリジナル盤の方もいらっしゃるが、殆どの方がオリジナル盤に音のよさを見出してのマニアである。


John Coltrane/Ballads
何故オリジナル盤は音がいいのか?この答はそう簡単ではない。先ず、時代背景を考えてみよう。
欧米では1957年から58年にかけてステレオ盤が登場した。レコード制作の技術者達はモノラル時代に蓄積したノウハウを「待っていました」とばかり爆発させた。そこで登場したのが、ビクター・リビング・ステレオ、マーキュリー・リビング・プレゼンス、コロンビア360サウンドなどである。この1958年から1963年くらい迄を「ステレオ黄金時代」と呼ぶ。実際「凄い!」と言える高音質盤はたくさん制作されている。
ただ、音のいいレコードが制作された時代はこの時代ばかりではない。英国では、60年代後半から70年代にかけてのロック・シーンでも高音質盤が多数制作されているし、アメリカのポップ・シーンでも、60~70年代に高音質盤は多数制作されている。また、CD時代の今日でも、当時のマスターテープを使った高音質盤が制作されているし、数は少ないものの一部の技術者達が制作した新録の中にも高音質盤(CD)と言えるものがある。
そこには優秀な技術者の存在がある。

録音、カッティング等のことは別の機会に話すことにして、オリジナル盤の音の良さの最大の要因はマスターテープ及びマザーラッカーにある。オリジナル盤の中でも1番目のスタンパーで制作されたものには別格に高音質なものがある。何番目のスタンパー迄が音がいいとは一概に言えないが、後のプレスになるほど音質は劣化してくる。数年後に再プレスされたものや、日本で発売されたものからは明らかな音質の変化が聴き取れる。
その原因は「マスターテープ及びマザーラッカーの劣化!」が挙げられる。レーベルによっては、スタンパー・ナンバーがインナー・グルーブに書いてあるので、マニア諸君には容易に分かるはずである。
次に、国内盤やリイッシュウ盤では、経年劣化したマスターテープや予備のテープを使い、その欠点を補うためにイコライザーを使用している。イコライザーを使う技術者の感性も影響してくる。従って元々の音とは似て非なるものが出来上がるのは明白、時間が経過して制作されたレコードに高音質を求めるのは所詮無理な話である。
余談だが、ブルーノートは音がいいことで定評があるが「国内制作のキング盤と東芝盤を比較するとキング盤のほうが音がいい」という話をよく聞く。あくまでも音がいいのはオリジナル盤のことで、これはナンセンス、次元の低い音の話である。
例外は、一部の優秀な技術者が作ったオリジナル・リマスター盤のなかに「凄い!」があることである。この話も別の機会に譲ろう。


代表的な高音質盤

では「オリジナルは全て音がいい」だろうか?答は「ノー!」である。たとえ1番目のスタンパーによって制作されたものでも「大したことはない」はたくさんある。録音技術者の力量、録音条件、カッティング・ハウスの善し悪しなど様々な要因が絡み合い、その要件が揃ったときはじめて高音質盤は出来上がるのである。

後で制作されたものよりオリジナル盤のほうが音がいい理由は大ざっぱに言えば以上のようなことだが、何せアナログは奥が深い。どんなに高音質盤を持ってきても、再生側に問題がある場合はその力は発揮出来ない。