レコードのススメ

第1章:レコード講座
 第11節 オリジナル盤の定義について

長いこと入荷したレコードがオリジナルかどうかを判断しているのだけど未だに「これはオリジ?それとも2nd?」と考え込むことがある。
そんなときにふと思うのは、「オリジナル盤というものの定義を決めた人がいるのだろうか?明確な定義というものがあるのだろうか?」ということである。例えば「Yahoo知恵袋」などに「オリジナル盤の定義は?」といった質問があり、それに答えている人もあるが、どうもピント外れが多いように思う。 本であれば初版本がレコードでいうオリジナル盤にあたるのだろうけど、本の場合はわりあいはっきりしているのではないかな。それに比べてレコードの場合は様々な要素が絡んでくるので一筋縄ではいかないのだ。
私なりにオリジナルを判断する目安としている項目を述べてみよう。

1 最初に発売された国のもの
レコードによってはアメリカが最初の発売の場合、ほぼ同じ時期イギリスや日本など他の国でも発売されていて、他の国で発売されたもので最初のものに関しては「イギリス・オリジナル」などの表現をしている。ここはちょっとややこしくて同じアメリカのミュージシャンでもレコードによってはイギリス発売がオリジナルといったケースもある。

2 レーベル及びレコード番号が最初発売のものと同じ
レーベル及びレコード番号に関しては”Goldmine Price Guide”など海外の書籍が発売されているので、これらを参照している。但し、書物が100%正しいとは言い切れない。

3 センターラベルが最初発売のものと同じ
センターラベルはレコード会社によって、また同じ会社でも制作された時代によって見るポイントが違う。これも”Goldmine Price Guide”や”The Record Label Guide for Domestic LPs”などを参考にし、かつ過去の積み重ねがあるので自前の資料も併用している。これも前記と同様書物が100%正しいとは言い切れない。

4 ジャケット・デザイン及び記載された文字が最初発売のものと同じ
センターラベルは同じでもジャケットの表が違うもの、裏の住所が違うものなど様々なタイプがある。

5 ジャケットないしは盤の雰囲気
曖昧な言い方だが、ジャケット及び盤は時代によって雰囲気が違ってくる。例えばアメリカではレーベルによって違いがあるものの、1950年代はコーティング仕様のものが多く、それに紙に厚みがある。60年代はノンコーティングが多くなって紙の厚さも50年代に比べると薄くなっていく。
盤の厚みも時代が進むにつれて薄くなっていく。但し、80年代には再び重量盤が登場するが、50年代の盤とは雰囲気が異なる。レコード番号、センターラベルの形状、ジャケットがオリジナルと全く同じものでも手に取っただけでずっと後に制作されたということが分かる場合もある。

6 以外の考慮するところ
1) センターラベルに溝のあるなし(deep groove)
deep grooveに関しては、一般的に溝のあるものが古いとされるが、レ-ベルによっては溝のないもののほうが古い場合もあるし、同じ時期にいくつかの場所でプレスされたのでは?と思えるものもあるので、溝のあるなしによってオリジナリティを考慮する場合とそうでない場合がある。

2) Flat disc
レーベルによって違いはあるが、1950年代中ごろまではレコードの外周に盛り上がりのないものがあり、以降針が盤面から外側に滑っていくのを防ぐための盛り上がり(ガード)が付くようになるが、ないものをFlat discと呼ぶ。Flat discのほうが古いとされる。しかし、1)と同じ理由で考慮する場合とそうでない場合がある。

3) デッド・ワックスの記載
音溝とセンターラベルの間に溝のない部分があり、ここにはマトリクスナンバーやマスタリング・エンジニアの名前など様々な要素が記載されているので、この記載を参考にすることもある。

正直な話、海外の書物を参考にはしているが100%とは思えない記述に出会うこともあり、レコードには不確定要素があるのでこれは致し方のないことだとも思う。アメリカ盤に関してはかなり勉強しているつもりだが、まだ知らないことも多く「あ、こんなことがあった」と新しい情報に出会うこともしばしばである。