レコードのススメ

第1章:レコード講座
  第9節 今週の一枚100選 A)TAS Super Disc No.1

新着レコードの中から今週の一枚として選んだレコードは2006年12月現在で183枚になります。これまで販売済みのものは即リストから外していましたので、お客様からは「そのまま掲載しておいて欲しい」との要望もありました。そこで、過去に選んだものから100枚をリストアップし、また推薦文に若干の加筆修正したものを10回ほどに分けて掲載します。第一回はTAS Super Discです。

Burt Bacharach / Casino Royal (Colgems COSO 5005)
「ジェームス・ボンド・シリーズ」から、ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーブン、ウルスラ・アンドリュース出演「カジノ・ロワイヤル」のオリジナル・サウンドトラック。このアルバムは、TASでもトップにランクされてるスーパー・ディスク中のスパー・ディスクです。バート・バカラック、ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラス、ダスティー・スプリングフィールドの演奏も素晴らしいのですが、何と言ってもサウンドの凄さは筆舌に尽くせません。A面2曲目「The Look of Love」でのダスティー・スプリングフィールドの耳元で囁くような声に、あなたは2ラウンドKO!




Chet Atkins / Caribbean Guitar (RCA LSP 2549)
カリブの爽やかな風に乗ってチェット・アトキンスが奏でる魅惑のギター、そばに別嬪さんでもいたら最高、も~たまりません!!カリブ海をテーマにしたチェット・アトキンスのアルバムといえば単なるムードミュージックと取られるかもしれないが、このカリビアン・ギターはちょっと違って、針を落としてみると桁外れの高音質。チェット・アトキンスのギターと一緒にカリブの風が優しく頬を撫でてくれるような心地になってしまい、リビングステレオ、1S/1Sの威力を改めて見直すことになるでしょう。選曲も「イエロー・バード」ほか聴いたことのある曲が多く馴染みやすい。




OST / The Emerald Forest (Varese STV 81244)
このアルバムは映画のサウンドトラックですが、"TAS Super Disc" です。"TAS Super Disc" とは、米国の権威あるオーディオ誌 "The Absolute Sound" が選定した超高音質盤のことで、世界的な音質評価の基準になっています。アフリカのジャングルでの鳥のさえずり、猛獣の唸り声などの雰囲気が再現されています。また、密林の静寂のなかで突如原住民の奏でる打楽器が響きわたり、まるで槍が飛んできそうになります。"TAS Super Dsc" の凄さを体験してください。大推薦!!!




Harry Belafonte / At Carnegie Hall (RCA LSO 6006)
私は基本的に男性ヴォーカルは聴かない。別嬪さんの美味しいところがたくさんあるのにわざわざ男性ヴォーカルを聴く必要もないのだが、例外もあり、ナット・キング・コールやハリー・ベラフォンテなど一部のアルバムは聴いている。キング・コールに関しては理由は別のときに話すとして、ベラフォンテはこのアルバムともう一枚を好んで聴いている。理由は特別音が良いのと、黒人フォークソングの底辺に流れる何かを聴くことが出来るから。このアルバムは1959年カーネギーホール・コンサートの記録であり、同ホールのステージがそのまま再現出来るようなたくさんの情報が詰まっていて、臨場感、質感共高いレベルにあり、ベラフォンテの喉チンコが見えるような錯覚にさえ陥ってしまう。このアルバムをTAS Super Discに選定したハリー・ピアソンに敬意を表して、今週の一枚に選んでみた。




Henry Mancini / Hatari (RCA LSP 2559)
ジョン・ウェイン主演、パラマウント映画「ハタリ」のオリジル・サウンドトラック、音楽はヘンリー・マンシーニが担当しています。マンシーニのアルバムには高音質盤がたくさんありますが、なかでもこの”ハタリ”は録音史上有数の高音質盤です。1962年制作、エンジニアリングはかの有名なアル・シュミットが担当しています。ソニック、レンジ、トーンどれをとっても申し分なく、RCAビクターが誇るリビング・ステレオのなかでもトップ・クラスにランクされています。ジョン・ウェインがジープに乗って飛び出してくるかもしれない。




18888 Bob and Ray / Bob and Ray (RCA LSP 1773)
1958年ステレオ創生期の頃、RCAは自社制作したLiving Stereoの中から特に録音状態のいいテープを選別し、1枚のアルバムに集約しました。それがこのBob and Ray / Stereo Spectacularです。ボブ&レイのおしゃべりで始まるこのアルバムでは、ドアの開く音、ガラスコップの割れる音、銃弾の飛び具合など、当時録音出来たとは考えにくいような音を見事に再現しています。それに、愛しのアビー様、レナ・ホーン、ディック・スコーティ、ベラフォンテ・シンガーズなど、様々なミュージシャンが目の前で演奏しているのが手に取るように分かります。これはRCAが誇るLiving Stereo、そして TAS Super Disc、オーディオファイル必携の一枚です。




Earl "Fatha" Hines / Fatha (M&K Realtim RT 105)
TAS Super Discとは亜米利加The Absolute Sound誌が選定した高音質盤です。世界中に様々な形で高音質盤の選定はありますが、例えどのように権威のある機関が選定したとしても、TAS Super Discにははるかに及びません。このアール・ハインズのアルバムは数少ないジャズTAS Super Discの一枚です。アール・ハインズが、デューク・エリントン、ファッツ・ウォーラー、セロニアス・モンク、アート・テイタムなど、ピアニストの巨人達に捧げたアルバム。アール・ハインズ・トリオ入魂の演奏をウルトラ高音質でお愉しみください。A面1曲目「バードランド」ではチューバのでかい朝顔がパワフルに顔を出し、目の前でハインズの太い指がピアノを弾いてくれます!




Charles Mingus / Mingus Ah Um (CS 8171)
メンバーは、チャールス・ミンガス(b)、ジミー・ネッパー、ウィリー・デニス(tb)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ジョン・ハンディ(as, cl)、シャフィ・ハディ(ts, as)、ホレス・パーラン(p)、ダニー・リッチモンド(ds)の8人編成。
ミンガスがメンバーの7人を自在に操り、素晴らしいミンガス・ミュージックが出来上がったと同時に、エリントンに捧げた「Open Letter to Duke」やレスター・ヤングに捧げた「Good Bye Polk Pie Hat」では、ミンガスの作曲家としてのたぐいまれな才能も十分に伺える作品である。特筆すべきはこのアルバムのサウンド、国内盤などでは聴かれなかったミンガスのパワフルなベースがぐんぐん迫って来るのがよく分かる録音。これほど凄い音のジャズ・アルバムは少ない!!




Don Shirley / Water Boy(Columbia CS 9196)
ピアノ、チェロ、ベースの変則トリオ演奏。A面1曲目に奴隷の歌「Water Boy」が入っているが、ベース・ソロからチェロ、ピアノが登場する場面で既にただ者ではない雰囲気が漂っている。「You Are My Sunshine」によく似たこの曲で、Don Shirleyは最初のフレーズで自身の二グロ・スピリッツを存分に発揮し、聴く者の心の中に深く入ってくるのを感じるのは私だけではないだろう。アルバムには、人種差別に苦悩するアメリカの黒人達が自由を求めて躍動する思いが、主張が込められていて、特にB面4曲目の「Freedom」では、苦悩から立ち上がり飛翔する姿が見事に表現されている。また、名盤と言えるものかどうかを判断する場合、「名演」であることは勿論「演奏者の表現したいことが聴き取れる」「演奏者が目の前で演奏しているのが分かる」を判断材料にしているが、実際にはこれらの条件を満たすレコードはかなり少ないのである。前述のように、このWater Boyは演奏者の表現したいことが聴き取れ、ドン・シャーリーが目の前で演奏しているのが分かるレコードである。ソロ・ピアノや、ピアノ、チェロ、ベースからなるトリオ、Martha FlowerのヴォーカルをフィーチャーしたレコードなどをCadenceに残してはいるものの、あまりにも過小評価されている(殆ど知られていない)Don Shirley、一世一代の名演である。